日本と距離も近く、経済成長が著しい中国。中国に進出している企業も多いことから、中国語の需要が高まっています。欧米圏と比較すると中国に留学する日本人は決して多いとは言えませんが、中国市場では中国語が話せる人材はとても重宝されます。また、中国は年々経済成長しており、中国マーケットへ進出する企業も多いため駐在員の方や現地採用で中国で仕事をする方も多くいらっしゃるかと思います。中国で事業を展開する、中国語を学ぶ際、知っておきたいのが中国の医療事情。治安も気になる中国でトラブルに巻き込まれてしまった場合や病気やケガをしてしまった時に困らないよう、しっかりと保険について把握しておくのが大切です。今回は中国の医療水準や医療制度、医療費などについてご紹介していきます。
中国の医療制度のポイント3つ
・中国の医療水準は世界的には平均レベル。外国人向けの私立病院では高い医療サービスを受けられますが、治療費が高額になります。
・現地の公立病院では待ち時間が長い、日本語が通じないため、中国へ渡航される方は海外旅行保険に加入する方が大半です。
・現地で私立病院に通院する場合は、日本の医療費水準の1.5倍〜2倍程度かかる可能性があるとみておきましょう。
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中国の医療水準について
出典:Health Care Index by Country 2020
NUMBEOが発表したHealt Care Index by Country2020によると、中国の医療水準レベルは世界47位となっています。こちらのランキング、1位は台湾、2位韓国、3位日本となっているランキングですが、調査対象となっている世界93カ国の中では中盤の順位となっています。ちなみに最下位はベネズエラです。
中国では、都市部の外国人専用外来があるような病院では英語や日本語などでは先進国と同様の医療が受けられるクリニックがありますので、現地の方が利用する病院の医療水準と外国人向けの私立病院でも医療水準の差が出てきます。しかしながら医療レベルは日本と比較すると低いため、医療を目的に日本に来る中国人もいらっしゃいます。
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中国の医療制度
中国の病院は、管轄によって病院のランクが決まっています。高いランクの病院では最新のMRIやCTなどの医療機器が完備されていることから、日本の一流の病院と変わらないような治療を受けることができます。
中国の病院ランクについて
(各級、甲乙丙の3つに更に細分化され、三級野中には特等というランクがあり全10ランクあります。)
- 最上位:三級病院、国や市の衛生局が管轄する病院(日本では厚生労働省管轄が該当)
- 二級病院:区が管轄する病院(区は省の下にある単位です)
- 一級病院:町や特定地域
二級は区が、一級は町や居住地で管轄を行っている病院です。二級以上の施設では、緊急性を要する診察科目に当直の医師が待機しており、原則として24時間体制で診察を行っています。医師のレベルに関しても、経験年数と試験によって日本の研修医に該当する住院医師から主治医師、副主任、主任医師に分けられます。
上記の病院ランクとは別枠で、日本人医師が常駐していたり日本語の通じる外資系のクリニックや日系クリニックが存在しています。こちらは、入院が必要ではないレベルの治療を行っておりますが、入院が必要な場合は総合病院を紹介されます。海外旅行保険に加入している場合は、現金不要で治療が受けられる提携病院があるかと思いますので、事前に確認することをお勧めします。
中国人向けの病院と外国人向け病院の違いは、価格面はもちろん外資系病院の方が高くなりますが、一番のポイントは病状を中国語もしくは英語で正確に伝え、かつ診断内容と今後の対策を理解することは専門用語が多く非常に難しいということです。一番安心なのは、渡航先エリアで日本語の通じる病院がどこにあるのかを事前に確認しておくことかと思います。こちらに関しては、海外旅行保険会社ごとに、医療通訳サービスや現地の病院アテンドサービスなどを提供している会社もありますので、事前の確認がおすすめです。
また、上記の病院ランクとは別で、北京、上海、大連、広州などの都市部では、VIP診察、外国人専用外来がある病院もあります。中国の公立病院では言葉が通じないことや、待ち時間が長い、治療のケア待遇が手薄などの点から、留学時や旅行中に病院に行く場合は向いているとは言えません。その点、VIP診察の場合は、長時間待たずに診察してもらえるなどのメリットもあります。また、外国人専用外来などでは日本人医師が常駐していたり日本語や英語が通じる外資系や日系のクリニックで、富裕層や海外旅行者向けとも言えます。医療費は高額になりますが海外旅行保険に加入している場合は、費用の面で悩むこともなく現金が不要のキャッシュレスで治療が受けられる提携病院もあるので、保険会社に詳細を問い合わせてみましょう。
中国人向けの病院と外国人向けの病院の違いとしては、治療費用の面で外資系の方が高くなります。しかしながら、病状を中国語や英語で正確に伝えてコミュニケーションを取るというのは至難の業。また、診断内容を理解することも専門用語を告げられると難しいことでしょう。北京、もしくは他の渡航先のエリアで日本語が通じる病院がどこにあるのかなど、事前に確認しておくのがおすすめです。
また、都市部と田舎の農村部では医療の面では大きく変わってきます。田舎では都市部のようなサービスは受けられません。また、農村部では衛生面がよくないことや医療技術や設備が十分ではありません。言葉も通じないことも多いことや、海外旅行保険の受け入れも整っていないと思っておいた方がいいでしょう。
海外旅行保険に加入していない場合は、治療費に関してはキャッシュレスではなく、建て替えが一般的です。田舎で治療を受けても改善せず、都市部の病院に移動することになったり、地元の人でも都市部の病院に行くなどいうことがあるので、地方の田舎の場合は少々信頼できない部分もあります。このような点から、北京などの都市部に留学中に田舎に行き体調を崩して病院に行くなどとならないよう、体調管理には気を付けるようにしてください。
中国の病院の精算システム
中国のほとんどの病院では、治療の都度精算するシステムとなります。レントゲンを取る場合は、レントゲン費用を支払う、問診を受ける場合は問診費用を受けるなどです。日本では一括清算のため治療を受けるための時間が非常にかかってしまう点が日本と異なる点でしょう。実際、中国の病院は非常に混雑しており治療を受けるだけでも一苦労です。
中国の医療費
中国の公立病院での医療費は比較的安価ですが、そうでない場合は高額になります。公立病院でない場合は、下記の料金より高額となると考えられます。
項目名 | 日本 | 中国 |
救急車を呼んだ場合の費用 | 無料 ※一般的に海外では費用が発生することが多くあります |
北京:6,453円
上海:4,500円 |
病院の初診料 | 3,000円弱程 | 6,200円~18,700円 |
虫垂炎の治療費 | 400,000円程
(日本の基準額は、10割負担を想定) |
北京:45,000~90,000円
上海:112,500円 |
骨折時の治療費 | 20,000円 | 38,900~311,200円 |
病院の部屋代(1日平均) | 個室:30,000円~100,000円
ICU:80,000円~100,000円 |
個室:9,300~107,200円
ICU:93,400~355,200円 |
海外旅行保険加入者で実際にあった中国の保険金請求事例
海外旅行保険加入者の中国における高額保険金請求例を見ていきましょう。高額な保険金請求例として挙げられるのは、中国での治療難易度が高い病気やケガが発生した際に日本へ緊急搬送される事態に陥った場合に高額な保険金請求が発生します。また、長期間の入院・手術をすることになった場合にも数百万円単位の保険金請求を受ける可能性があります。海外ですので、日本の健康保険では医療費水準が異なることから十分なカバーがされないケースが多いですので、これらのリスクをどうカバーするかが重要です。
No. | 内容 | 請求金額 |
1 | 昼食中に右半身に力が入らなくなり救急車で搬送。脳梗塞・肺炎と診断され26日間入院。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添い医療搬送。 | 819万円 |
2 | 発熱・咳・頭痛を訴え受診。ウィルス性脳炎と診断され18日間入院。家族が駆けつける。 | 645万円 |
3 | 首・肩の痛みが続き息苦しく寝付けなくなり受診。心筋梗塞と診断され6日間入院。家族が駆けつける。 | 607万円 |
4 | カート場で運転中に壁に衝突、腰を強打し受診。腰椎圧迫骨折・尺橈骨骨折と診断され17日間入院・手術。 | 414万円 |
5 | 腹痛と背中の痛みを訴え受診。胆嚢炎と診断され4日間入院・手術。 | 387万円 |
6 | 搭乗車が他の車と衝突。腰椎骨折、橈骨・膝蓋骨粉砕骨折、全身他部位損傷と診断され8日間入院・手術。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添いチャーター機で医療搬送。 | 1415万円 |
7 | 観光中濡れた道で転倒。脛骨・腓骨の骨折と診断され合併症の危険性があることから、医師・看護師が付き添いチャーター機で医療搬送。帰国後61日間入院。 | 1025万円 |
8 | 観光中に意識を失う。くも膜下出血・内頚動脈瘤と診断され13日間入院・手術。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添いチャーター機で医療搬送。 | 2000万円 |
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中国の衛生面について
中国の衛生面は決していいとは言えません。北京などの都市部は地方の田舎と比較したら、それでも衛生面はいい方ですが、日本から中国に留学する際には中国の衛生面についても注意しておきたいことがいくつかあります。衛生面は体調にも大きく影響し、衛生面が悪かったことから病気になり病院に行くようなことになりかねません。このようなことから衛生面には気を配り、留学中に気を付けたい衛生面について把握しておくのも大切です。
中国のトイレ事情
中国のトイレ事情は決していいとは言えません。よく知られている壁も仕切りもなく、隣の人とあいさつをしあう「ニーハオトイレ」は減少していることから、北京などの都市部に留学する場合はこのようなトイレに遭遇することは、ほとんどないと言えるでしょう。しかしながら、中国人は土足に便座に乗る習慣があります。このような点からも、一見きれいに見えるトイレであっても、便座が汚れていないかどうか確認することをおすすめします。
水や食べ物に注意する
神経質になりすぎる必要はありませんが、「大丈夫かな?」と思うような食べ物や飲み物は口にしない方がいいでしょう。
残留農薬と水質の両方で不安な面があり、生野菜やカットフルーツはなるべく口にしないようにしましょう。北京などの大手の店舗や外資系のスーパーであれば大丈夫ですが、小さなお店では消費期限が長すぎたり、温度管理ができていなかったりと、安全とは言えない食べ物を置いているところもあります。また、水は水道水は直接飲むのはやめましょう。煮沸するかペットボトルの水を購入するのがベターです。
中国では食事や水などの衛生面から体調不良を起こし、病気にかかる可能性が高いです。このような点からも、衛生面に気を使い食べ物や飲み物には注意するようにしましょう。
留学で中国に滞在する際の海外旅行保険は?
中国に留学する留学生には政府から中国の保険に加入するよう通達が出ているとも言われていますが、各大学の対応は様々で実際は統一されていません。このような点からも、日本から中国に留学する留学生のほとんどが、留学前から日本の留学保険に加入しています。中国では衛生面から体調を崩し病院に行くということもあるので、留学保険や駐在保険には必ず加入しておくのがベターです。また、何かのトラブルに巻き込まれてしまった時などにも、きちんと対応してくれる保険に加入しておくべきといえます。日本語が通じる病院などが留学先エリアの近くにあるかなども把握しておくと、いざという時にも焦らずに済みますね。
海外旅行保険の便利なサービス
病気やケガで病院に通院する際、医療用語が中国語でとっさに出ないといったこともあるかと思います。海外旅行保険では医療通訳サービスや現地で物を壊してしまった際賠償責任を負った際に代わりに交渉してくれるクレームエージェントサービスなどが整っておりいざと言うときに便利なサービスです。また、日本語の通じる病院などで医療サービスを受けた際治療費が高額になるものもキャッシュレスメディカルサービスを利用すれば自費の持ち出しをせず保険会社が代わりに病院に治療費を支払ってくれ、中国滞在中に重宝されます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。中国へ滞在する際、医療レベルや医療費水準を考えると海外旅行保険に加入しておくのが無難でしょう。現地での滞在中にトラブルを抱えると日本と異なる環境ですので精神的な負担も大きくなります。渡航前に、いざという時のための備えをしておくと充実した中国滞在を過ごすことができるかと思います。
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