アパートなど賃貸契約を結ぶ際に、同時に火災保険も契約するでしょう。
「内容はわからないけど、とにかく加入しなくてはいけないということは分かったのでそのまま不動産屋が推奨したものに加入した」という方がほとんどではないでしょうか?
実は、火災保険は家主から特に指定がなければ自分で探して加入することができます。
賃貸住宅などのアパート入居者の火災保険について、徹底解説します。
・不動産屋の勧める火災保険は家財額が適当でないことがあるため、見直しが必要
・地震保険をつける場合は保険料控除の対象になるため年末調整の際は要注意
・引っ越しする時は重複して加入しないように気を付けること!
火災保険の内容とは
そもそも、火災保険の内容は具体的にどのようなものなのでしょうか?
保険をかける対象や備えることができるリスクをおさらいしてみましょう。
保険の対象
火災保険は保険の対象を「建物」「家財」「建物+家財」の3パターンから選択することができます。
アパートなどの賃貸の場合建物にかける火災保険は大家さんがすでにかけているため、入居者は加入する義務はありません。
アパート入居者は「家財」にかける火災保険に加入することとなります。
家財とは自分が所有する家電・家具などを指し、30万円以上の貴金属などは家財には含まれず、明記物件として別に保険をかけなくてはいけないことがあります。
補償内容
補償 | 例 |
火災・失火やもらい火による火災の損害の補償 | 火災で住宅が燃えた |
破裂・爆発 | 強風で窓ガラスが割れた、そのガラスの破片で家財が破損した |
風災・雹災・雪災・風・雹・雪などによる損害を補償 | 強風が窓ガラスが割れ、そのガラスの破片で家財が破損した |
水濡れ・漏水などによる水濡れの損害を補償 | 給排水設備の故障により部屋が水浸しになった、マンション上階からの水濡れで部屋が水浸しになった |
水災・台風や集中豪雨による損害を補償 ※津波による損害は補償対象外 | 大雨で床上浸水した |
盗難・盗難に伴う盗取、損傷、汚損による損害を補償 | 泥棒に鍵や窓ガラスを壊された、泥棒に現金や家電製品を盗まれた |
騒擾・集団行為等に伴う暴力行為・騒擾や集団行為による暴力や破壊行為の損害を補償 | 労働争議に巻き込まれて家を壊された |
建物外部からの物体の落下・飛来・衝突・建物外部からの物体による損害を補償 | 家に車で突っ込まれた、飛んできた野球ボールに窓ガラスを割られた |
上記の内容に加えて、地震保険や個人賠償責任の特約をつけることができます。
火災保険が必要な理由は?
アパート入居者の方の火災保険の補償対象は家財ということとなりますが、若い方の一人暮らしなどで「別に保険をかけてまで大切にしている家財はない」という方も中にはいるのではないかと思います。
その場合には火災保険に加入する必要性はないと考える方がほとんどかと思います。
しかし、火災保険に入らないと万が一の時に大変な思いをする可能性があります。
なぜ火災保険が必要であるのかを3つ紹介します。
・自分の財産を守る
・大家さんに対する原状回復義務
・第三者に対する損害に備える
自分の家財を守る
こちらも先ほど説明した通りですが、日本では民法の失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)があります。
こちらは重大な過失がなければ、自分が起こした火災で隣家に火が燃え移っても賠償責任を負わないという内容です。
一方で、こちらの法律が意味するのは、隣家が出火元で自分の家財が火事で損害を受けても損害賠償請求をすることができないということを示しています。
高額な賠償責任を負った事態に備えるために、家財を対象とした火災保険に加入しましょう。
大家さんに対する原状回復義務
アパート入居者の方は、退去時に入居時と同じ状態にしておかなくてはいけない「原状回復義務」を負っています。
このため、特約で「借家人賠償責任」がついた火災保険に加入する必要があります。
日本では火事を起こしてしまった場合でも賠償責任を負わない「失火責任法」という法律がありますが、原状回復義務は火災も対象となっているため、もし自分が原因でアパートを焼失させてしまい、家主から損害賠償を求められた場合には建物を元に戻すための費用が必要となります。
その事態に備えるための特約が「借家人賠償責任」となります。
よって家財補償額を最低限にしても、借家人賠償責任付きの火災保険に加入する必要があるのです。
第三者に対する損害に備える
アパートなどの集合住宅で多いのが、水漏れによる第三者の家財へのトラブルです。
お風呂の水を出したままにしていて、下の階まで水漏れし被害を与えるなどの事例が多いです。
「借家人賠償責任」で補償されない日常のトラブルを補償してくれます。
他人にケガをさせたり、他人の財物を壊すなど、法律上の損害賠償責任を負った場合に必要な保険ですので、特に集合住宅に住む場合は必要になります。
火災保険で必要な保険
火災保険に加入する場合、大きく分けて3つの保険が必要です。
- 家財保険
- 借家人賠償責任保険
- 個人賠償責任保険
家財保険
ご自身の家財を補償する保険です。
家財とは、入居した時に持ってきた物全てが対象になります。
冷蔵庫や洗濯機などの金額が大きい電化製品だけではなく、服や時計なども含まれています。
万が一、火事で家が全焼した場合はすべてを新しく買い直す必要があり、想像以上に金額が大きくなるでしょう。
新しく買い直す必要を補償してくれるのが「家財保険」です。
賃貸住宅に住む方は、家財保険に加入しないと、特約である「借家人賠償責任保険」と「個人賠償責任保険」に加入することができないため、加入が必須の保険と言えるでしょう。
借家人賠償責任保険
大家さんへの損害賠償を補償する保険です。
万が一、借りている部屋で火事を起こした場合に、修繕費を大家さんから求められます。
その時の修繕費の費用を補償してくれる保険です。
そのため、賃貸契約をする上で一番必要で加入が必要条件となる場合が多いのが、「借家人賠償責任保険」です。
個人賠償責任保険
日常生活において起こる事故やトラブルの賠償責任を補償する保険です。
隣人などの第三者に損害を与えた場合の費用を補償してくれます。
家で起こったトラブルだけではなく、自転車に乗っていて第三者に損害を与えた場合などにも適応されます。
補償範囲が広く、第三者に対するトラブルを補償してくれるのが「個人賠償責任保険」です。
火事の事例
火災保険が適応される重大な例は、どんなことが考えられるでしょうか。
火災保険に加入していたとしても、保険が適応されなければ意味がありません。
どういった場合に、火災保険が適応されるのか事例を紹介します。
・料理中の不注意
・タバコの火が原因の火事
料理中の不注意
ガスコンロに、天ぷら油の入った鍋を加熱している時に、目を離して出火していたなど、料理をしている時の火事が考えられます。
また、親が外出中に子どもが料理をするなど、自分は大丈夫と思っていても子どもの好奇心から火事が発生する場合もあります。
特に油を使う場所のため、台所が火元の火事には注意しましょう。
タバコの火が原因の火事
タバコの火を消したかどうか確認をせず、吸い殻を紙類と一緒に捨てて外出したときに出火したなど、タバコが原因の火事が多く報告されています。
タバコの不始末は、過失の割合が重いと保険金は支払われません。
布団の上などでタバコを吸い火事になった場合、燃えやすいことが分かっている布類でタバコを吸ってたため重過失として扱われます。
保険の対象になるかは、ご自身では判断できないため必ず保険会社に確認する必要があります。
タバコの不始末が原因の火事は、喫煙者の方であれば起こる可能性が高いため火災保険に加入することをおすすめします。
賃貸入居者向け火災保険チェックポイント
火災保険に加入する際、具体的にチェックしておくべきポイントをご紹介します。
- 家財の補償額(=再取得に必要な費用)は適当か
- 個人賠償責任特約は、既に他の保険で加入していないか
家財の補償額は適正か
家財に対する補償は必要ですが、補償額が多すぎる場合は保険料が高くなります。
適正な補償額かを確認して、保険料を抑えることをおすすめします。
個人賠償責任特約は、既に他の保険で加入していないか
個人賠償責任特約は、自動車保険などの他の保険で既に補償を持っている場合が考えられます。
自動車保険や家族が加入している保険で、自分が被保険者の個人賠償責任保険がある場合は個人賠償責任特約を外すこともできます。
ご自身が既に加入している保険と補償内容が重複する場合があるため、既に加入している保険証券を確認して補償がない部分を補う火災保険に加入することをおすすめします。
大きくこの2つの部分をチェックしておけば問題ないでしょう。
基本的には不動産会社が指定する保険契約を締結しなくてはいけないということはなく、自分で探して加入した保険の内容を不動産会社に説明すれば、不動産会社も家主に伝えてくれるかと思います。
もしも不動産会社が勧めるプラン以外にも見てみたい、という場合は一括で複数社を比較できるサイトや、代理店を利用して保険会社により保険料が変わってくるかどうかなどを見てみるのもオススメです。
火災保険に加入する時に知っておくべきポイント
火災保険に加入する時に、知っておく方が良いポイントを3点紹介します。
・不動産屋が推奨する保険は注意が必要
・引っ越し時の注意点
・地震が原因の火災は補償対象外
不動産屋が推奨する保険は注意が必要
不動産屋で火災保険を契約するときに、詳しく説明を受けて加入した人はどれくらいいるのでしょうか?
きっと「内容についてはよくわからないが、加入しなくてはいけないから入った」という方が多いのではないかと思います。
しかし、賃貸入居者にとって一番必要な火災保険の要素は特約の「借家人賠償責任保険」「個人賠償責任保険」です。
言われるがままのプランに加入すれば家財の補償額が少なかったり、あるいは多すぎることもあります。
また、不要な補償がついていたりすることもあります。
当然、家財補償額やつける補償内容によって保険料は変わってきます。
賃貸契約時には火災保険の内容を一度見て、自分にとって超過保険(補償額が多すぎるなど必要以上の保険)になっていないか、あるいは一部保険(保険金額が少なすぎるなど不足する恐れのある保険)ではないかを一度確認しましょう。
引っ越し時の注意点
保険契約満期前に賃貸住宅から賃貸住宅へ引越しする際に、火災保険の重複加入が起こることがあります。
例えば賃貸契約も2年、火災保険も2年でかけていて1年で引っ越しすることになった場合は、火災保険の解約も忘れずにしなくてはなりません。
重複加入を避ける目的もありますが、途中解約をすることによって残りの期間にかかる保険料を払い戻しすることができるのです。
また、引越しの際には手続きをすれば転居前の火災保険を転居先で継続できる可能性があるため、解約する必要はありません。
解約をする場合も、継続する場合も手続きは必要になるため、必ず保険会社に連絡をしましょう。
地震が原因の火災は補償対象外
日本では、年々大規模地震への危機感が高まり、地震保険の加入率も増加しています。
しかし、火災保険は地震が原因で火事が起こった場合は補償の対象外となるため注意が必要です。
賃貸の場合は建物への地震保険は基本的にオーナーがかけていますが、入居者が加入する家財を保険の対象とした火災保険にも、地震保険をセットすることで補償をもつことが可能です。
また、火災保険は対象外ですが、地震保険は税金の還付を受けることができる保険料控除の対象となっています。
会社にて年末調整を行う場合など、地震保険加入者は要チェックです。
まとめ
不動産屋に勧められるがまま加入することが多い賃貸の火災保険。
本当に自分にとって適当な補償額がついているのかどうかを見直していくことが大事です。
本コンテンツは情報の提供を目的としており、保険加入その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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