「太陽光発電を設置したけど、メーカー保証だけで大丈夫か不安になってきた」
「台風や地震被害に備えられる保険に加入したい」
飛来物によるパネルの破損、大雨による浸水被害など、自然災害に備えるためには、任意保険への加入が必要です。
今回は、メーカー保証の補償内容、任意で加入しておいた方が良い保険の種類・補償内容などについて詳しく解説していきます。
太陽光発電のメーカー保証だけでは不十分?基本的な補償内容
太陽光発電を製造販売している各メーカーの保証は、システム保証が10~15年、出力保証は10~25年です。
メーカー保証期間中は、無料で補償を受けることが出来ます。
「システム保証」とは、太陽光発電設備システムの不備に関する保証です。
製造上の問題や、説明書通りに使用していたにも関わらず、太陽光パネルやパワーコンディショナーが故障した場合に無料で修理・取替を行ってもらえます。
「出力保証」とは、太陽光パネルの出力値を保証するものです。
設置した太陽光パネルの出力値がメーカーの規定値よりも低くなった場合、無料でパネルの修理・取替えを行ってもらえます。
太陽光発電のメーカー保証対象外になるトラブル事例
- 台風の飛来物・倒木により太陽光パネルが破損
- 記録的豪雨による土砂崩れに太陽光パネルが巻き込まれた
- 大雪による積雪が原因で支柱が歪んだ
- 落雷が原因で故障してしまった
メーカー保証には「システム保証」と「出力保証」があるとお伝えしましたが、自然災害が原因の故障は基本的にメーカー保証の対象外です。
災害に備える場合は、任意の保険会社に加入する必要があります。
では、メーカー保証の対象外になるトラブルでよくある3つの事例をご紹介します。
落雷で壊れてしまい、発電できなくなってしまった
最近は、ゲリラ豪雨が全国各地で頻発するようになり、落雷や大雨による水没被害は年々増加傾向です。
落雷には「直撃雷」と「誘導雷」があり、太陽光パネルが被害に遭う確率が高いのは誘導雷といわれています。
誘導雷は、付近の木や電柱などに雷が落ち、電圧が誘導電流を起こして周囲に影響を及ぼす雷のことです。
誘導電流となった雷は、ケーブルや送電線を伝って家電などに流れ込み、急に規定以上の電圧がかかった機械は故障してしまうというわけです。
太陽光パネルの場合は、太陽光発電の電流を変換するための装置(パワーコンディショナ)に被害が出やすいとされています。
積雪の重みが原因でパネルがゆがんでしまった
積雪によって、太陽光パネルを支えている支柱が重みに耐えきれず歪んでしまったり、パネル自体が割れてしまう事例も報告されています。
というのも、雪は積もると1立方メートル(1m×1m×1mの面積)で150㎏以上、どんどん降り積もって根雪になっていくと500㎏以上になることもあるそうです。
記録的な豪雪や、普段雪が降らない地域での積雪に関するニュースは記憶に新しいのではないでしょうか。
基本的に、太陽光パネルは斜めに設置されているため、雪は積もっても滑り落ちるはずです。
しかし、短時間で大雪が降り積雪になった場合はどうでしょうか。
北陸や東北地方が豪雪に見舞われた2021年1月2月には、雪に慣れているはずの新潟県の大規模太陽光発電所で、太陽光パネルが雪の重みに押しつぶされるという被害が発生しました。
積雪対策として傾斜角度を高めに設定していたそうですが、短時間で大雪が降ったため、雪が滑り落ちる間もなく積もってしまったことが原因のようです。
台風でパネルが飛ばされ近くの建物を破壊してしまった
- 屋根に設置した太陽光パネルが強風で飛ばされて、隣家の壁を壊してしまった
- 台風でパネルが外れ、通行人にケガを負わせてしまった
太陽光パネルが外れる原因は、設置業者の付け方が甘かったということも考えられます。
施工業者を選ぶ際は、料金の安さではなく、施工実績や口コミ、見積もり時の対応などをチェックして決めることをおすすめします。
また、台風被害では上記以外にも「風で飛んできた物が太陽光パネルにあたって破損してしまった」などという事案もあります。
周囲に被害を出す危険性だけではなく、飛来物によって太陽光パネルが被害に遭う危険性もあるのです。
それと同時に、台風では大雨や洪水、浸水被害、土砂崩れの危険性も高まります。
メーカー・設置業者によっては自然災害も補償対象になっている
基本的なメーカー保証内容は、システム保証と出力保証の2点です。
しかし、メーカーによっては有償で「日照補償制度」「自然災害補償」を付帯できるようになっています。
太陽光パネルを購入する際、設置費用や年間売電収入などに目が行きがちですが、メーカーの保証内容もしっかり確認しておきましょう。
ちなみに「日照補償制度」とは、日照時間が平均よりも不足して、十分な発電が出来なかった場合に補償される制度です。
気象庁が発表している日照データを参考にして、居住地域の日照時間平均値を測定。
その測定値を基に、補償適用の有無が判断されます。
日照補償制度は、太陽光パネルのメーカーや、太陽光発電システムを設置する(している)住宅向けローンで導入されています。
【事業者向け】産業用太陽光発電の損害保険
メーカー保証の内容だけでは、自然災害や事故に対する補償が十分でないことは理解できたと思います。
そのため、太陽光発電事業者は任意保険への加入が必須になります。
- 自然災害による故障
- 盗難被害
- 第三者への損害
- 故障により売電できなかった期間の損害
上記のリスクに備えるための保険を、このあと1つずつ解説していきます。
企業総合保険
企業総合保険では、火災、風災、落雷などの自然災害による損害から、盗難や偶然の破損事故まで補償対象になっています。
企業版の火災保険という認識で問題ありません。
- 火災、落雷、破裂・爆発
- 風災、雹(ひょう)災、雪災
- 給排水設備事故の水濡れ等
- 騒擾(じょう)、労働争議等
- 車両・航空機の衝突等
- 建物の外部からの物体の衝突等
- 盗難
- 水災
- 電気的・機械的事故
- その他偶然な破損事故等
ちなみに、地震による損害は基本補償に含まれていない保険会社がほとんどです。
地震に備えられる特約補償を付けるか、地震保険に加入しておきましょう。
施設賠償責任保険
企業総合保険では、太陽光パネル自体の損害を補償できますが、第三者に対する賠償金は補償されません。
太陽光パネルの破損などが原因で、近隣住人や住宅で損害を与えてしまった場合、損害賠償責任が生じます。
施設賠償責任保険に加入していれば、損害賠償金の支払い、訴訟を起こされた場合は争訟費用もカバーできます。
- 法律上認められた損害賠償金
- 争訟費用、弁護士費用
- 損害防止軽減費用
- 事故発生時の緊急措置費用
- 保険会社の要求に伴う協力費用
ちなみに、会社が独断で支払った被害者への見舞金に関しては補償の対象外です。
休業損害補償保険(売電収入補償特約)
休業損害補償保険は、太陽光パネルが自然災害などで故障してしまった時の損失をカバーするための保険です。
太陽光パネルが故障してから修理が完了するまでの期間は、売電できないため損失が生じますよね。
休業損害補償保険に加入しておくことで、修理期間中の損失を補うことが出来るんです。
【個人向け】太陽光パネルが原因の損害に備える保険
続いて、一般家庭で太陽光パネルを設置する際、個人で加入できる任意保険は主に3つです。
- 住宅総合保険
- 住宅火災保険
- 個人賠償責任保険
すでに持ち家を構えている方の多くは「住宅火災保険」には加入していると思います。
住宅総合保険
住宅総合保険は、住宅火災保険よりも幅広い範囲の事故を保証できる保険です。
- 火災
- 落雷
- 爆発、破裂
- 風災、ひょう災、雪災
- 洪水、床上浸水
- 水漏れ
- 物体落下、衝突
- 集団行動に伴う暴力行為
- 盗難など
ただし、地震や津波などの天災による損害は補償の対象外になっています。
住宅火災保険
基本的に、太陽光パネルは火災保険の対象です。
火災保険の対象は「家財」と「建物」に分類されるのですが、太陽光パネルは建物に組み込まれることが多いです。
- 火災
- 落雷
- 爆発、破裂
- 風災、ひょう災、雪災
- 洪水、床上浸水
- 水漏れ
- 物体落下、衝突
- 盗難
尚、地震が原因で発生した火災事故、津波被害については、火災保険も補償対象外です。
別途、地震保険への加入をしておきましょう。
ちなみに、太陽光パネルが火災保険の対象になっていると分かると
「家はすでに住宅火災保険に加入しているから、何もしなくて大丈夫」
と思うかもしれませんが、後付けで自宅の屋根に太陽光パネルを設置した場合、保険料は見直した方が良いです。
なぜなら、太陽光パネルの設置によって家の評価額が変わるため。
適切な価格の保険金をかけておかないと、万が一の時に受けられる補償が不十分になってしまいます。
また、太陽光パネルが「建物」と「家財」どちらに分類されるのかは、保険会社によって異なるため、設置する際は保険会社に確認しておきましょう。
個人賠償責任保険
個人賠償責任保険は、火災保険の特約として付けることもできますし、個別で加入することもできます。
太陽光パネルに起因する事故が原因で、第三者へ損害を与えてしまった際の損害賠償金などをカバーするための保険です。
第三者への損害例を挙げると、
- 太陽光パネルが台風で飛ばされて、近くにいた通行人にケガを負わせてしまった
- 太陽光パネルが落下して、隣家の車を壊してしまった
などが該当します。
被害者がご近所さんだった場合、今後のためにも迅速かつ真摯な対応は必要不可欠ですよね。
個人賠償責任保険に加入していれば、被害者への損害金支払い手続きの他、保険会社が適切なサポートをしてくれます。
仮に訴訟問題に発展した場合は、争訟費用や弁護士費用もカバーできるので安心です。
太陽光発電の保険料算定基準
太陽光発電の保険料は、主に以下の項目を基準に算定されます。
- 建物の構造(鉄筋コンクリート・木造住宅など)
- 所在地
- 設備工事費用
- 特約補償
これらの内容を加味した上で保険料が決定されるため、一概にいくらというのは決まっていません。
建物の構造
鉄筋コンクリート構造の手物なのか、木造なのかによって、火災や地震のリスクは異なります。
また、太陽光パネルを屋根に設置する際の設置工事費用にも関わるため、建物の構造は保険の算定基準になってきます。
陸屋根(平らな屋根)、切妻屋根(屋根が2面)など、屋根の形状によっても設置費用は変わってきます。
所在地
意外かもしれませんが、建物の所在地によっても保険料は異なります。
例えば、地震の発生率が高い地域、地盤が弱い地域など。
災害の起こるリスクが高い地域ほど、保険料が高くなる傾向にあります。
設備工事費用
太陽光パネルの設置にかかった費用も、保険料の算定基準です。
損害が発生した場合に受け取れる保険金に関わるものなので、当然のことながら支払う保険料にも関係してきます。
特約補償
基本的な補償内容に付帯する特約によっても保険料は異なります。
「とりあえず特約をつけておけば安心」というわけではありません。
特約を付ければその分保険料が高くなるので、基本補償ではカバーできないリスクを見極めてオプションをつけておきましょう。
太陽光発電の保険を扱っているおすすめの保険会社
以下の保険会社では、太陽光発電に関する保険を取り扱っています。
- 東京海上日動火災保険
- 損保ジャパン
- 三井住友海上
- あいおいニッセイ同和損保
補償範囲、付帯できる特約補償は異なるので、どのようなリスクが想定されるのか把握して、加入する保険を選んでください。
尚、これから太陽光パネルを設置する方は、メーカーや代理店業者によって収支シミュレーションが行われるはずです。
収支シミュレーションとは、「設置する場所・パネルの数でどのくらいの発電が可能なのか」「何年で設置費用を回収できて、利益が生まれるのか」といった試算です。
「保険料が高くて、太陽光パネルを設置した意味があまりなかった……」
という結果を避けるためにも、保険料を含めた収支シミュレーションをしておくことをおすすめします。
太陽光発電投資で損をしないための対策方法
- 定期点検(基本、年に1回)
- モニターチェックの習慣化
- パワーコンディショナのメンテナンス
太陽光パネルは高い費用をかけて設置するのですから、できるだけ多くの利益を生みたいですよね。
設備投資後にできる、簡単な対策方法をみていきましょう。
年に1回は定期点検を実施する
基本的に、年1回のペースで、施工会社に依頼して定期点検の実施をおすすめします(有料)。
定期点検では、太陽光パネルやパワーコンディショナの設備周りを点検してもらえます。
太陽光パネルに鳥のフンや落ち葉がついていると、ホットスポット化してしまいます。
パネルにホットスポットができると、長時間発電ができなくなり発熱してしまいます。
一部分が発熱してしまうと、発電機が正常に機能できなくなり発電能力が著しく低下してしまうのです。
定期点検では汚れがあれば清掃も行ってもらえるので、そのような損失を防ぐことができますよ。
毎日モニターチェックをする
毎日モニターで発電状況をチェックしておくことも、太陽光発電投資で損しないための対策になります。
たまにしかチェックしていないと、比較対象データが少ないため数値の異常に気付けないこともあるでしょう。
毎日発電状況を確認しておけば、発電量が大幅に少ないなどの異常に気付けて迅速に対策を打てますよね。
また、メーカーや代理店に問い合わせする際も、日々のデータを追っていれば話しをスムーズに進めやすいです。
パワーコンディショナ(パワコン)のメンテナンスをする
パワーコンディショナ(パワコン)は、太陽光パネルで発電した電気を、建物内で使用できる電気に変換する機器です。
一定の電圧を保つための機能も備えていて、太陽光発電において欠かせない役割を担っています。
そんなパワーコンディショナは、冷却ファンが正常に作動しているか、本体が異常に熱くなっていないか、異音・異臭はしていないかなど、目視で点検しておくとよいでしょう。
ただし、パワーコンディショナの中はメーカーや代理店しか確認できないため、異常に気付いた場合は自分で対処せず、メーカーなどに連絡してください。
まとめ
- 火災保険
- 地震保険
- 損害賠償責任保険
- 休業損害補償保険(事業者向け)
今回は、太陽光発電の保険について解説してきました。
太陽光パネルは、基本的に火災保険の対象になります。
風災や大雨、落雷などによって故障してしまった場合は、火災保険に加入しておけば補償を受けられます。
しかし、太陽光パネルが落下・破損して、通行人や近隣住宅が被害を受けた場合の損害賠償金は補償されません。
また、太陽光発電事業を行う場合、故障が原因で稼働できない期間の損失も、火災保険では補償されません。
どのような保険及び補償内容が必要なのかは、設置する環境や規模によっても異なります。
メーカーや業者とリスクの洗い出しを行い、必要な保険への加入を検討しましょう。
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