法人保険に加入したけれど、出口戦略を練っていない……
法人保険に加入したけれど、いまいち活用方法が分からない。
決算に備えて節税対策のために、とりあえず保険に加入したという方も多いでしょぅ。
しかし、何も戦略を立てないまま保険に加入すると、逆に法人税を多く支払わないといけなくなったということも少なくありません。
今回は、法人保険に加入する際に考えるべき出口戦略について、基本を解説します。
この記事を読んだあなたは、出口戦略のポイントや注意点、活用方法を理解できるでしょう。
法人保険の出口戦略とは?
法人保険に加入する際、節税効果を期待して加入する方も少なくないでしょう。
しかし、加入しただけでは節税効果を最大限に得られるか分かりません。
あらかじめ、保険の活用方法をみつけ、出口戦略を立てることが重要です。
法人保険の出口戦略(エグジット・ストラテジー)は、法人が契約している保険をどのように解約または受け取るかを計画する重要なステップです。
特に、解約時や満期時の保険金の受け取り時には税務面での影響が大きいため、慎重に進める必要があります。
何も対策を考えていない場合、法人税の課税対象になり税金を多く支払わなければいけなくなる可能性もあるでしょう。
法人保険の出口戦略のポイント
主な、法人保険の出口戦略のポイントについて紹介します。
解約返戻金の受け取り
法人保険を途中で解約する際、解約返戻金が発生します。
解約返戻金は、受け取る時期によって会社の財務に影響を与える可能性があるでしょう。
税務上の取り扱いによっては、雑収入として計上しないといけない場合もあるため、注意が必要です。
例えば解約返戻金が大きい場合、資金が必要になる時期に計画的に解約することで戦略的に資金を準備できます。
また、解約返戻金を受け取った年度に利益が出ている場合は、再度保険に入り直すという選択肢もあります。
利益を繰り延べることになるため、出口戦略をしっかりと検討することをおすすめします。
満期保険金の受け取り
満期保険金を受け取る際、その保険金は法人の収入として計上されます。
これにより、法人税の負担が増える可能性があるため、税務上の計画が必要です。
例えば、受け取り時期を調整し、法人の利益が低い年に受け取るなどの戦略が必要になります。
退職金としての活用
法人保険は、経営者や役員の退職金の原資として活用されることが多いです。
退職金として支給する場合、税制上の優遇措置を受けられる可能性があるため、適切な計画が求められます。
相続税対策としての活用
法人保険は、経営者の相続税対策にも利用されます。
保険金の受け取り方によっては、相続税を軽減することが可能です。
例えば、法人が受け取った保険金を後継者の事業承継に活用する方法もあります。
損金計上のタイミング
法人保険の保険料は損金に計上できることが多いですが、解約時や満期時にその金額が一部または全額益金として戻ってくる場合もあります。
このため、損金計上と益金計上のタイミングを計画的に行う必要があります。
出口戦略を立てる時の注意点
出口戦略を立てる時の注意点を、3点紹介します。
・専門家と連携する
・保険に加入する目的を再確認する
・加入する保険種類に応じた戦略を立てる
専門家と連携する
出口戦略を立てる際は、税務専門家や保険代理店との密な連携が不可欠です。
特に税務の取り扱いが複雑な場合があるため、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
保険に加入する目的を再確認する
法人保険に加入した目的を再確認し、現在の法人の状況に合った出口戦略を選ぶことが必要です。
例えば、当初は事業資金の確保が目的だった保険が、経営者の退職金準備に転換される場合もあります。
なぜ保険に加入しているかをしっかりと把握することが大切です。
加入する保険種類に応じた戦略を立てる
保険には定期保険、終身保険、養老保険などさまざまな種類があり、それぞれに適した出口戦略があります。
契約する保険の特徴を理解し、最適な選択を行いましょう。
解約返戻金を受け取るタイミング
法人の出口戦略を考える際のポイントとして、解約返戻金を受け取るタイミングが重要になってきます。
解約返戻金を受け取るタイミングは、「年単位」で見るのではなく「月単位」で見ることをおすすめします。
月によって、解約返戻金率は異なるからです。
経過年数5年目だとしても、5年1ヶ月目と5年11ヶ月目では、解約返戻率は変わってきます。
そのため、解約を考えている場合は、最も返戻率が上がる月を考えて解約することをおすすめします。
保険の仕組み「失効」を利用する
保険の「失効」という手段を利用して、解約返戻金のピークをずらすことが可能です。
猶予期間内に保険料のお払い込みがなく、ご契約の効力が失われることをいいます。
ご契約が失効すると、保障がない状態になり、保険金・給付金・年金などをお支払いできないことになります。
失効したご契約に解約返還金がある場合には、ご契約者は解約返還金と同額の返還金を請求することができます。
解約するタイミングで、解約返戻金と同様またはそれ以上の損金を作ることができない場合に、「失効」の仕組みを利用するのも便利です。
ただし、失効中は保障がないため、どうしても解約を先送りにしたい場合のみ利用することをおすすめします。
解約返戻金がある法人保険
解約返戻金がある法人保険には、以下のような種類があります。
長期平準定期保険
法人が役員や従業員の死亡保障を目的として加入する保険です。
解約返戻金が契約の一定期間後に発生します。保険期間が長いため、返戻金も時間の経過に応じて高額になる場合があります。
・保険料の一部を「保険料」として損金算入でき、残りを「前払保険料」として資産計上
・解約返戻金が発生した際には、受け取った金額を「雑収入」として計上し、返戻金の範囲内で損金算入していた部分は逆に益金に計上する必要がある
逓増定期保険
契約期間が経過するごとに保険金額が増加するタイプの保険で、経営者や役員の死亡保障に使用されます。
解約返戻金が一定の年数後に高額になることが特徴です。
・初期の保険料は損金として認められ、契約が進むにつれ返戻率が高くなる段階で前払費用として資産計上
・解約返戻金を受け取った場合、受け取った金額を雑収入として処理し、以前に資産計上していた部分と相殺される
養老保険
満期時に保険金が支払われ、また死亡時には死亡保険金が支払われるタイプの保険です。
保険期間終了時には解約返戻金が支払われるため、福利厚生としても使われます。
・保険料のうち、死亡保障に該当する部分は損金計上し、貯蓄部分は資産計上
・満期時や解約時に受け取る返戻金は雑収入として計上
定期保険特約付終身保険
終身保険に定期保険を付加した保険です。
終身保険の部分には解約返戻金が発生し、定期保険部分には解約返戻金がありません。
・終身保険の部分は前払費用として資産計上され、定期保険部分は損金として処理
・解約返戻金が発生した際には、雑収入として計上し、資産計上していた部分と相殺
解約返戻金を使う以外の出口戦略は?
法人保険における出口戦略として解約返戻金を利用する以外にも、下記の2点のような出口戦略が考えられます。
・既存資産を利用した出口戦略
・分割契約による出口戦略
既存資産を利用した出口戦略
既存の資産を活用する方法は、保険契約を維持しながらキャッシュフローを確保したい場合に適しています。
法人は、保険を解約せずに資産を活用して別の形で資金調達やリスクヘッジを行うことができます。
契約貸付制度の活用 | 契約中の保険に対して、保険会社から「契約貸付」として解約返戻金の範囲内で資金を借りることができる。 保険契約を維持しつつ資金を調達できるため、急な資金需要に対応可能。 返済は自由だが、未返済の場合には、保険金から差し引かれることがあります。 |
既存資産の売却やリースバック | 保険とは別に、法人が保有する不動産や動産などの資産を売却したり、リースバックすることで、即時の資金を確保することができる。 特に高額な保険料を支払う場合には、保険を解約せずに資金を作る手段として有効。 |
法人所有の金融資産の活用 | 保険契約を維持しつつ法人が保有する株式や債券、預金などの金融資産を活用することで、資金ニーズに応じた柔軟な対応が可能。 これにより、保険の解約返戻金を利用せずにキャッシュフローの確保ができる。 |
分割契約による出口戦略
法人保険の解約返戻金が一括で支払われる場合、一度に高額な収入が発生し税負担が重くなることがあります。
これを回避するために、分割契約や段階的に保険を処理することで出口をスムーズに進める方法があります。
保険金受取の分割 | 解約返戻金や保険金の受け取りを分割で行うことで、一度に大きな収入が発生しないようにすることが可能。 法人税負担を抑えることができ、法人のキャッシュフロー管理も容易になる。 |
保険契約の一部解約 | 契約の一部のみを解約することで、段階的に返戻金を受け取る戦略。 返戻金が一度に多額にならず、法人の収益や税務面での負担を調整できる。 |
複数の保険契約に分けて加入 | あらかじめ複数の保険に分けて加入し、それぞれの契約を必要に応じて解約することで一度に多額の返戻金が発生しないようにする。 解約返戻金を段階的に受け取りつつ、税負担を分散させることができる。 |
出口戦略のおすすめは退職金としての活用
法人保険の出口戦略は色々ありますが、一番活用されているおすすめは退職金としての活用です。
・損金算入できる金額が大きい
・退職所得控除が適用される
損金算入できる金額が大きい
退職金は法人にとって経費として計上することができ、法人税の軽減につながります。
退職金は給与として支払う場合に比べ、損金にできる額を大きくすることが可能です。
これにより、法人としては税負担を軽減しつつ、役員や従業員への十分な報酬を提供できます。
ただし、経費として算入できる退職金の額が高額すぎる場合は損金算入できません。
同じ業種の規模が同じぐらいの会社と同等程度の退職金までになります。
役員の退職金を決める多くの場合は、「功績倍率法」を用いることが多いです。
最終報酬月額×勤続年数×功績倍率=役員退職金
退職所得控除が適用される
個人が受け取る退職金に対しては「退職所得控除」が適用され、税金の軽減効果があります。
退職所得は通常の所得税率よりも優遇され、特に長期間勤務した場合に控除額が増えます。
具体的には、勤続年数に応じて一定額が控除され、その残額に対して課税される仕組みです。
これにより、個人としても受け取る退職金に対する税負担を大幅に軽減することができます。
これらのポイントを活用することで、法人の出口戦略をより効果的に設計し、税効率を最大限に引き出すことが可能です。
詳しくは専門の税理士やコンサルタントに相談することをおすすめします。
まとめ
今回は、法人保険の出口戦略の基本について解説しました。
法人保険に加入する場合は、あらかじめしっかりと出口戦略を立てておくことで節税対策につながります。
税理士やコンサルタントなどの専門家と相談しながら、しっかりとした出口戦略を立てましょう。
脚注
本コンテンツは情報の提供を目的としており、保険加入その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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