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D&O保険(会社役員賠償責任保険)の必要性とは?保険料の相場や基礎知識を解説

D&O保険(会社役員賠償責任保険) 保険料 相場

D&O保険(会社役員賠償責任保険)は、大きな会社じゃない場合でも必要なのかな?

D&O保険の仕組みが複雑でいまいちよく分からない……

会社役員が損害賠償責任を負った場合のリスクをカバーするD&O保険の必要性や内容を理解していない方も少なくないでしょう。

会社役員に起こり得るリスクをどのようにカバーすれば良いか不安かと思います。

今回は、D&O保険(会社役員賠償責任保険)の必要性や基礎知識について解説します。

この記事を読んだあなたは、D&O保険(会社役員賠償責任保険)の内容を理解できるでしょう。

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目次

D&O保険(会社役員賠償責任保険)の必要性

会社役員は、なぜ賠償責任保険に加入する必要があるのでしょうか。

会社の役員が負う責任には、どのようなものがあるかを紹介します。

会社に対する責任

会社役員に求められることは、正しい経営判断をして会社を健全に運営することです。

そのため、役員が経営判断を誤り会社や第三者に損害を与えた場合は、損害賠償責任を負うことになります

逆に、会社や第三者に損害を与えたけれど、役員の判断が正しかった場合は損害賠償責任は問われない場合もあります。

会社役員が果たすべき会社に対する責任は、下記の表の通りです。

会社に対する義務内容
善管注意義務
忠実義務
(会社法355条)
取締役として法令、定款、株主総会決議を遵守して、会社のために忠実に業務を遂行しなければならない
競業避止義務
(会社法356条1項1号)
取締役会の承認なしに、会社との業種と同じ仕事を自分で経営してはならない
利益相反取引回避義務
(会社法356条1項2号3号)
取締役がやむを得ず利益相反取引を行う場合には、事前に取締役会の承認を得なければならない
監視・監督義務
(会社法362条2項2号)
他の取締役の行為がきちんと法令・定款に則って仕事をしているか監視しなければいけない

このように会社役員は、役員としての責任を果たすことが義務付けられています。

第三者に対する責任

次に、取引先などの第三者から損害賠償責任を求められるリスクがあります。

会社役員が果たすべき第三者に対する責任は、下記の表の通りです。

第三者に対する義務内容
一般の不法行為責任
(民法709条)
故意または過失により他人の権利を侵害した者はその損害を賠償しなければならない
会社法上の特別責任
(会社法429条)
役員等がその職務を行うにあたり悪意または重大な過失があった場合は、当該役員は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う

社員が行った業務上の過失や、不正な取引が原因で損失を受けた場合でも、社員だけではなく会社役員の監督不行き届きなど役員にも責任が追及されます。

このように会社役員には重い責任があり、第三者から賠償責任を求められるケースが考えられます。

訴訟額が高額

会社役員が責任を問われる損害賠償額は、高額なケースが多いです。

会社法では、一定の条件を満たさない場合の賠償責任の限度額は設けられていません。

そのため、原則として実際に会社に損害があったすべての賠償責任を負うことになります。

実際に訴訟額が1兆円を超えるケースや、億単位の損害賠償が課されるケースも発生しています。

大企業だけではなく、中小企業の場合でも損害によっては訴訟額が高額になることが考えられます。

裁判にかかる弁護士費用や敗訴した場合の賠償責任の全額が役員の個人負担となるため、万が一の場合に対応できるように備えておくことをおすすめします。

D&O保険(会社役員賠償責任保険)の事例

損害賠償請求の事例を紹介します。

株主代表訴訟

株主代表訴訟とは、会社の経営者である取締役の経営責任を株主が会社に代わって追及し損害賠償を請求する訴訟のことです。

事例

・取締役が、情報管理体制の構築という職務上の注意義務を怠ったために、情報流出が発生し、会社に損害を与えたとして、責任を追及された。

・元取締役が、過去に不適切な会計処理を行っていた問題に関して、財務状況を顧みない独断的な経営で会社に多額の損害を与えたとして責任を追及された。  

・取締役が損失隠しをめぐる不祥事の隠ぺいを図り会社に損害を与えたとして、責任を追及された。

会社訴訟

会社訴訟とは、会社役員が会社に損害を与えた場合に、会社が自社の役員に対して損害賠償を請求する訴訟のことです。

事例

・元代表取締役が在任中、取締役会決議を経ることなく社債を引き受け たことについて、取締役の善管注意義務および忠実義務に違反するとして、会社から元代表取締役に損害賠償請求がなされた。  

・元代表取締役による部下を引き連 れた転職は、忠実義務違反または雇用契約上の誠実義務違反もしくは不法行為に当たるとし、退職した従業員の募集費用、教育費用、逸失利益による損害、さらに名誉棄損・ 信用低下による無形損害を会社に与えたとして、会社から元代表取締役へ損害賠償請求がなされた。

従業員からの訴訟

従業員や従業員の家族が、会社役員に対して損害賠償を請求する訴訟です。

事例

・ 従業員の過労死について、遺族から会社に対して損害賠償請求が提起された。

 ・会社内のパワハラにより精神的苦痛を受けたとして従業員から会社と人事担当役員に対して損害賠償請求が提起された。

第三者からの訴訟

取引先などの第三者が、会社役員に対して損害賠償を請求する訴訟です。

事例

・事業提携先と共同プロジェクトを進めていたが、将来の見通しが不明確になってきたために十分な協議もなく提携を解消したところ、提携先からそれまでの投資金額が回収不能になったとして、担当役員に対して損害賠償請求が提起された。

・誤って欠陥のある商品を販売した会 社の代表取締役が、他人に損害を与える可能性がある欠陥商品を販売しないようにすべき職務上の義務を怠ったとして、買受人から損害賠償請求が提起された。

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D&O保険(会社役員賠償責任保険)とは?

D&O保険

会社役員を守るD&O保険(会社役員賠償責任保険)とは一体どのような保険なのでしょうか。

補償される範囲・補償内容・保険金が支払われない場合などについて内容を紹介します。

D&O保険は何の略?

D&O保険は、会社役員賠償責任保険のことでDirectors and Officersの略です。

Directors(取締役) とOfficers(執行役・監査役)の役員か賠償責任を追及された時に、損害場賞金や訴訟費用をカバーしてくれます。

補償される範囲

基本的には、損害賠償金と争訟費用が補償されます。

それ以外にも、保険会社によっては補償される範囲に対象の違いがあったり、追加できる特約によって補償範囲を広げることも可能です。

税金・罰金・科料・過料・課徴金・懲罰的損害賠償金・倍額賠償金などに関しては、補償の範囲外のため注意が必要です。

補償内容

基本補償・特約補償の内容
損害賠償金役員が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対しての費用を補償
争訟費用役員が争訟費用を負担することによって被る損害に対しての費用を補償
初期・訴訟対応費用補償役員に対して損害賠償請求が追及された場合等に、役員が負担する費用(会社補助参加調査費用、訴訟に関する必要文書作成費用等)を補償します
コンサルティング費用補償役員が負担するコンサルティング費用(コンサルティン グ業者の起用にかかる費用)等を補償
調査・手続等対応費用補償役員が負担する公的調査等対応費用、刑事手続対応費用、財産または地位の保全手続等対応費用および信頼回復広告費用を補償
被保険者間訴訟費用一部補償保険金が支払われる損害賠償請求に起因して役員間相互間において責任分担についての訴訟が提起された場合に、役員が負担する争訟費用を補償
身体障害・ 財物損壊一部補償身体障害・財物損壊、精神的苦痛、人格権侵害に対する損害賠償請求について、雇用慣行危険および争訟費用に限り、役員が被る損害を補償
緊急費用補償普通保険約款や会社経営総合補償特約で規定する費用のうち、緊急性が高く、当社の事前の同意を得る前に負担した場合に、事後的に有益かつ妥当と認められる費用を補償
被保険者間訴訟補償特約他の役員からなされた損害賠償請求により役員が被った損害(損害賠償金・争訟費用)を補償
会社有価証券賠償責任補償特約会社の有価証券の売買もしくは募集もしくはこれらに かかる勧誘に関する法令、または有価証券の登録に関する法令、もしくは証券取引所の規則に違反し たとの申立てに基づいてなされた損害賠償請求により、会社が被る損害を補償
株主代表訴訟補助参加費用補償日本国内において役員に対して提訴された株主代表訴訟について、会社が補助参加することによって負担した争訟費用を補償
公告・通知費用補償役員に対して損害賠償請求がなされた場合等に、会社が負担する責任免除公告・通知費用、訴訟告知受理広告・通知費用、不提訴理由通知費用を補償
社内調査費用補償会社において不祥事が発生した場合または発生したことが疑われる場合に、会社が負担する社内調査費用を補償
改善報告書等作成費用補償会社に対して証券取引所から改善報告書等の提出請求がなされた場合に、会社が負担する改善報告書等作成費用を補償
第三者委員会設置費用補償会社において不祥事が発生した場合または発生したことが疑われる場合に、会社が負担する第三者委員会設置費用を補償
緊急費用補償普通保険約款や会社経営総合補償特約で規定する費用のうち、緊急性が高く、当社の事前の同意を得る前に負担した場合に、事後的に有益かつ妥当と認められる費用を補償

保険会社によって補償される内容や特約名などに多少の違いがあります。

契約者・被保険者

契約者:会社

被保険者:会社役員

被保険者の会社役員は、取締役だけではなく、執行役・監査役・会計参与・社外役員・管理職なども含まれます。

支払限度額

D&O保険(会社役員賠償責任保険)の支払限度額は保険会社によって異なります。

限度額を1億円としている場合もあれば、5,000万円から10億円まで1億円単位で設定できる場合もあります。

会社の規模や業種によって、設定できる支払限度額が変わってくるため、自社に相当する金額を設定することをおすすめします。

保険金が支払われない場合

下記の場合は、損害賠償請求に対して保険金が支払われません。

・被保険者が私的な利益または便宜の供与を違法に得た場合

・被保険者の犯罪行為

・法令に違反することを被保険者が認識しながら行った行為 

・被保険者に報酬または賞与等が違法に支払われた場合

・被保険者が公表されていない情報を違法に利用して、株式・社債等の売買等を行った場合

・保険証券記載の遡及日より前に行われた行為

・身体障害、精神的苦痛、財物損壊等、人格権侵害についての損害賠償請求

・保険金の支払いを行うことによりが保険会社が制裁、禁止または制限を受けるおそれがある場合

保険料の税務上の取り扱いは?

D&O保険(会社役員賠償責任保険)の保険料は、税務上どのように取り扱われるのでしょうか。

全額損金にできる

会社が保険料を負担した場合、保険料は全額損金にできます。

D&O保険(会社役員賠償責任保険)は、会社を守るための保険ではなく役員を守るための保険ですが、保険料を会社が負担する場合は損金にできるとされています。

会社法では、保険料の全額を会社が負担した場合でも役員の給与課税は行わないとしています。

そのため、D&O保険(会社役員賠償責任保険)に加入することで役員を守るだけではなく、法人税の負担を軽減することにも繋がるでしょう。

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2021年3月改定の会社法

2021年3月に改正された会社法の中で、D&O保険(会社役員賠償責任保険)に関する規定が新設されています。

改定前は、手続きなどが明確にされていなかったため、保険が適切に運用されるようにするための規定が設けられました。

株主総会(取締役会)の決議が必要

2021年3月に改正された会社法の改正内容のポイントは下記の通りです。

・会社がD&O保険(会社役員賠償責任保険)の内容を決定するには、「株主総会」または「取締役会設置会社では取締役会」の決議による必要がある

・決議する内容は、「保険会社・被保険者・保険料・保険期間・保険金の支払事由および支払限度額、保険金により填補される損害の範囲など」

・D&O保険(会社役員賠償責任保険)の更新時は、同様の決議が必要

2021年3月以降に加入した新規保険だけではなく、既契約の更新時にも改正後の内容にそった手続きが必要になるため、注意が必要です。

会社補償とD&O保険の違い

「会社補償」とは、役員が職務の執行に際して負う損害賠償責任などの費用を会社が負担する制度のことです。

D&O保険(会社役員賠償責任保険)と会社補償は、どちらも役員が負った損害賠償金や訴訟費用を補償するという点では同じですが、そもそも契約する当事者が違います。

補償契約当事者内容
会社補償会社と役員が契約を結ぶ役員に課せられる損害賠償責任を会社が補償する
D&O保険会社と保険会社が契約を結ぶ会社が保険会社に保険料を支払い、役員に課せられた損害賠償金は保険会社から保険金として支払われる

会社補償ではカバーできない部分をD&O保険(会社役員賠償責任保険)で補うことも可能です。

D&O保険(会社役員賠償責任保険)の保険料の相場

D&O保険(会社役員賠償責任保険)の保険料の相場は、会社の規模や業種によりさまざまです。

売上や保険金額の設定、追加する特約によっても幅があるため、金額を知りたい場合は保険会社に問い合わせましょう。

保険会社によっても、扱っているプランや補償内容が違うため保険料に差があります。

複数の保険会社に相談して比較検討することをおすすめします。

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D&O保険(会社役員賠償責任保険)のポイント

最後に、D&O保険(会社役員賠償責任保険)のポイントを2つ紹介します。

・役員を退任した後も補償される

・海外で発生したトラブルも補償される

役員を退任した後も補償される

会社役員は、会社を健全に運営するために大きな責任を負っています。

その責任は大きく、役員を退任した後も在任中の損害賠償責任は、損害が発生してから10年間は問われる可能性があります。

そのため、D&O保険(会社役員賠償責任保険)では保険契約が更新されず代替契約も結ばなかった場合、退任役員について保険責任期間を10年延長することが可能です。

在任時の行為について損害賠償請求がされた場合でも、補償を受けられるケースがあります。

海外で発生したトラブルも補償される

D&O保険(会社役員賠償責任保険)は、日本国内だけではなく海外で発生したトラブルに対しても補償されます。

大手企業の場合は、日本だけではなく世界中で事業展開している会社も多いでしょう。

そのため、日本限定の補償だと保険に加入する意味がなくなります。

海外で発生したトラブルも補償されるため、幅広いリスクをカバーできる保険です。

逆に海外進出していない会社の場合は、対象範囲を日本限定に設定することができ、少しですが保険料も安く抑えられます。

まとめ

D&O保険(会社役員賠償責任保険)は、正しい経営判断を求められる会社役員を守るために必要な保険です。

役員が損害賠償訴訟を起こされた場合に、賠償金やその他の費用を補償してくれます。

自社に起こり得るトラブルを想定して、適切な補償内容のD&O保険(会社役員賠償責任保険)に加入しましょう。

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この記事を書いた人

保険相談Times(株式会社インシュアランスブレーン)では、海外旅行保険(留学・ワーホリ・駐在・海外長期渡航など)・火災保険・法人損保に関するお問い合わせを日々多数いただいています。その中で、お客様からのご質問・やり取りの中から「この情報は保険加入前に知っておいた方がいいな」といった内容を記事にまとめて保険の選び方を発信しています。
スタッフの詳細なご紹介:https://hokentimes.com/oversea/staff

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