法人で自動車保険に加入する場合、車の名義は法人でないといけない?
法人契約と個人契約の違いや、被保険者をどうしたら良いのか分からない。
法人の自動車保険のメリットや、個人保険との違いをいまいち理解していない方も少なくないでしょう。
車両や保険の名義や、保険に加入するにあたっての条件が気になると思います。
今回は、法人の自動車保険について選び方やメリット、条件などを解説します。
この記事を読んだあなたは、法人で自動車保険に加入するための必要な知識を得られるでしょう。
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法人の自動車保険とは?
自動車保険は、法人契約と個人契約の2種類があります。
法人契約の特徴や、個人向けではどのような違いがあるかを解説します。
自動車保険の法人契約
法人契約の自動車保険は、従業員の運転中のリスクをカバーする保険です。
法人契約は、下記の3つが原則同一法人であることが条件です。
・契約者
・記名被保険者
・車両保有者
車両保有者が法人でも、記名被保険者が個人の場合は、法人契約の対象外になります。
また、近年は自動車保険もインターネットで気軽に加入できるようになっていますが、法人契約の場合は基本的には保険会社や代理店を通して加入する方法が一般的です。
法人契約と個人契約の違い
法人契約と個人契約は、名義の違いだけではなく、大きく違う点が5つあります。
法人契約 | 個人契約 | |
---|---|---|
契約方法 | ・保険会社や代理店から加入 | ・保険会社や代理店から加入 ・インターネットから加入 |
保険料 | ・新車割引 ・年齢条件による割引 ・フリート契約による割引 | ・新車割引 ・年齢条件による割引 ・フリート契約による割引 ・ゴールド免許による割引 |
補償の範囲 | ・すべての従業員 | ・設定した被保険者 ・配偶者 ・兄弟 ・子ども |
使用目的 | ・事業用(タクシーやトラックなど) | ・日常レジャー ・通勤通学 ・業務 |
特約 | ・搭乗者傷害事業主費用 ・リースカーの車両費用 ・企業、団体見舞費用特約 ・法人他者運転特約 ・安全運転教育費用特約 ・対人賠償使用人災害特約 ・受託貨物賠償責任特約 ・代車費用特約 ・事業用積載動産特約など | ・個人賠償責任特約 ・弁護士費用特約 ・臨時費用特約 ・他車運転特約 ・代車費用特約など |
個人契約の使用目的の業務は、営業の移動手段として車を使うなどが対象になります。
タクシーのように「お客様を乗せる」であったり、トラックの「荷物を配送する」ような、車が利益を生み出す事業の場合は個人契約の対象外のため、法人契約しか加入できません。
特約についても、法人契約でしか付帯することができない法人特有の特約もあります。
また、法人契約の方が、走行距離が長くなったり、複数のドライバーが運転することから、個人契約よりも事故のリスクが高いため保険料が高い傾向があります。
法人向けの自動車保険の補償内容
次に法人向けの自動車保険の補償内容や、追加できる特約の詳細について紹介します。
主な補償内容
主な補償内容は、下記の通りで法人契約も個人契約も変わりはありません。
しかし、保険金の設定金額に違いがあります。
補償名 | 詳細 | 一般的な保険金額 |
---|---|---|
対人賠償 | 事故で一番重要になる補償です。 運転中に相手を死亡させたり、ケガを負わせた場合の治療費や慰謝料など。 | 無制限 |
対物賠償 | 事故によって相手の物を壊した場合の修理代など。 | 無制限 5,000万円 1,000万円 500万円など設定が可能 |
人身傷害補償 | 自分もしくは搭乗者がケガをした場合の治療費や働けない間の収入を補償。 個人契約では、バスやタクシーなどに搭乗中でも補償される場合がありますが、法人契約の場合は契約車両以外の搭乗中は補償されません。 | 3,000万円~5,000万円 |
搭乗者傷害補償 | 契約している車に搭乗中の人がケガを負った場合に補償。人身傷害補償でカバーできる補償のため、補償をつけるかは選択制の場合が多い。 | 1,000万円 |
自損事故 | 単独事故を起こして、運転手か搭乗者が死傷した場合に補償される。 | 1,500万円 |
無保険車傷害 | 事故の相手が自動車保険に加入していない場合や当て逃げの場合に、修理費や自分の治療費などを補償。 | 2億円 |
車両保険 | 契約している車が何らかの損傷を受けた時に修理費を補償 | 車両の価値によって算出 |
自動車を所有するにあたり加入が義務付けられている自賠責保険もありますが、自賠責保険だけでは補償内容が不十分のため、必ず上記のような補償内容を持つために任意保険に加入することをおすすめします。
保険金額の設定は、ご自身の会社の状況に合わせて保険会社と相談して決めましょう。
追加できる特約
次に、法人契約で付帯できる特約の内容について紹介します。
特約名 | 詳細 |
---|---|
搭乗者傷害事業主費用 | 自動車に搭乗していた従業員が死亡やケガをした場合の賠償補償 |
リースカーの車両費用 | 事故や盗難によるリース中の車への補償 |
企業・団体見舞費用特約 | 事故により死亡やケガをした相手への見舞金などを補償 |
法人他者運転特約 | 自社ではなく取引先の車を運転した従業員が事故を起こした場合の補償 |
安全運転教育費用特約 | 事故を起こした従業員などの安全運転教育費用を会社が負担した場合の補償 |
対人賠償使用人災害特約 | 主な補償内容である対人賠償の対象外である従業員が死亡やケガをした場合の補償 |
対物賠償非所有管理財物特約 | 主な補償内容である対物賠償の対象外である他者から借りている財物に損害を与えた場合の補償 |
受託貨物賠償責任特約 | 運送業者が輸送する貨物や、積み下ろし作業中に損害が発生した場合の補償 |
事業用積載動産特約 | 主な補償内容の対物補償や車両保険では補償されない備品などの損害を補償 |
この他にも保険会社によって付帯できる特約はさまざまです。
運送業を営む場合は、「運送業者受託貨物賠償補償」は必ず必要になる補償です。
「運送業者貨物賠償責任保険」など特約ではなく、単体の保険に加入している場合もあるでしょう。
自動車保険の特約でも補償をもつことができるため、補償が重複している場合があるので注意が必要です。
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法人向けの自動車保険が高い理由
車両の使用頻度や範囲
法人向けの車両は、個人向けよりも頻繁に使用され長距離移動や多くの目的に使用されることが多いです。
このため、事故のリスクが高まり、保険会社はそのリスクに基づいて保険料を設定しているため保険料が割高になります。
事故リスクの高さ
法人車両は営業や配送、社員の移動などに利用されることが多く、運転者が複数である場合もあります。
個人の車両に比べて、事故が発生する可能性が高いとみなされることが多いため、保険料も高くなる傾向にあるでしょう。
保険料の割引制度の違い
個人向けの自動車保険には、ゴールド免許割引や長期無事故割引などが多くありますが、法人向けの保険ではこれらの割引が適用されないことが一般的です。
法人契約では個別の運転者ではなく、会社全体のリスクが考慮されるため、個人向けに比べて割引が少なくなることがあります。
フリート契約とは?
自動車保険の契約は、契約する台数によって契約区分が3つに分けられます。
・フリート契約
・ノンフリート契約
・ミニフリート契約
多くの車両を保有する会社の場合は、フリート契約の方が保険料の割引が適用されるためおすすめです。
フリート契約 | ノンフリート契約 | |
---|---|---|
契約台数 | 10台以上 | 9台以下 |
保険料割引の適用 | 契約者ごと | 自動車1台ごと |
保険証券 | 法人に対して1枚 | 自動車ごとに1枚 |
年齢条件の設定 | なし | あり |
それぞれの内容について詳しく紹介します。
フリート契約
運送会社やタクシー会社であれば10台以上の車を保有していることがほとんどでしょう。
10台以上の車を保有している場合は、フリート契約をおすすめします。
また、10台以上の車を保有している場合は、所有者と使用者が同一であれば、個人名義の場合でもフリート契約が可能です。
ノンフリート契約
一般的な自動車保険は、ノンフリート契約です。
所有する車は9台以下の場合は、フリート契約は結べないため、必然的にノンフリート契約になります。
ミニフリート契約
一部の保険会社のみの取り扱いになりますが、2~9台所有している方向けのミニフリート契約です。
一般的には法人向けの契約ですが、個人でも契約することができる場合があります。
フリート契約のように1枚の証券で一括契約ができるけれど、保険料の割引率はノンフリート契約が適用されるようになります。
10台以上の車を保有している会社の場合は、フリート契約をおすすめします。
法人向け注意ポイント!自動車保険の選び方
法人向けの自動車保険で注意しなければいけないポイントが2つあるため、紹介します。
・すべての自動車の等級が下がる
・保険料が割高になる可能性がある
フリート契約で加入した場合、1台が事故を起こすと、すべての車の等級が下がるため、保険料が高額になる可能性が考えられます。
フリート契約で保険料を算出する時のポイントは、法人の事故件数と支払った保険金が影響します。
1人が死亡事故などで高額な保険金が発生する事故を起こすと、連帯責任で契約しているすべての車の保険料があがります。
会社全体で事故が多い場合は、フリート契約では逆に保険料が高くなることや、保険会社から引受を拒否される可能性があるため、注意が必要です。
まずは、保険会社と会社の事故状況を踏まえてどの契約方法にするかを相談しましょう。
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法人向けの自動車保険に加入するメリット
法人向けの自動車保険特有の契約や、注意点について紹介してきました。
次は、法人契約で加入するメリットを紹介します。
・保険料の割引がある
・法人向け限定の特約を付加できる
・記名被保険者ごとに加入する必要がない
保険料の割引がある
フリート契約の場合、最大70~80%保険料が割り引かれる場合があります。
割引の多さは、保有台数が多いほど割引率が高くなり保険料を削減できるでしょう。
法人向け限定の特約を付加できる
個人契約と法人契約では、付加できる特約に大きな違いがあります。
法人契約の場合は、とくに事業のリスクに対する補償をもてる特約が多く存在します。
受託貨物賠償責任特約や事業用積載動産特約など、法人に考えられるリスクをカバーする法人特有の特約です。
個人契約では、このような特約は追加できないため、法人契約の特権と言えるでしょう。
記名被保険者ごとに加入する必要がない
個人契約の場合は、記名被保険者ごとに保険に加入する必要がありますが、法人契約の場合は、従業員1人1人が個々に加入する必要がありません。
会社の従業員であれば、法人として扱われるため、運転者ごとに補償対象を変更する必要がないです。
ただし、注意しておきたいのがノンフリート契約は年齢設定が可能なため、設定年齢に満たない従業員は補償の対象外となってしまいます。
若い社員を受け入れている会社がノンフリート契約をする場合は、1番年齢の低い社員に合わせて年齢設定をすることをおすすめします。
法人自動車保険の保険料は経費計上ができる
法人名義の自動車保険の場合は、保険料は会社の必要経費として経費計上することが可能です。
保険料分の経費が増えることにより、利益が少なくなるため課税対象額が低くなり節税に繋がります。
フリート契約やノンフリート契約どちらの場合でも、支払った保険料は全額損金として計上することが可能です。
ただし、下記の条件を満たしていないといけません。
・法人名義で保険の契約をしていること
・保険の加入目的が、事業で使用する目的であること
経費計上が可能な自動車保険の保険料ですが、高すぎると本末転倒になるため、できる限り保険料は抑えることをおすすめします。
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保険料を安く抑える方法
少しでも経費を削減するために、法人の自動車保険料を安く抑える方法を紹介します。
・年齢の条件を設定する
・特約を見直す
年齢の条件を設定する
ノンフリート契約の場合は、年齢条件を設定することが可能です。
年齢条件を下記の3種類から選ぶことができます。
・全年齢補償
・21歳以上補償
・26歳以上補償
年齢条件を26歳以上に設定することで、運転経験がある年齢の人に補償対象が限定されるため、保険料を安く抑えることが可能です。
従業員の年齢を考慮しながら、年齢条件を設定しましょう。
特約を見直す
特約を付帯することで、補償内容をしっかりと持つことが可能ですが、その分保険料は高くなります。
また、特約で付帯している内容と、他契約で加入している保険内容が重複している場合も考えられます。
必要以上の補償内容になっていないかを再確認し、不要な特約を外すことで保険利用を安くすることが可能です。
自動車保険を法人契約する流れ
最後に、自動車保険を法人契約する場合の流れについて紹介します。
一般的な手続きの流れ
一般的な手続きの流れは下記の通りです。
1.保険会社や代理店に相談する
2.補償内容・保険金額を決める
3.見積もりを出してもらい検討する
4,申し込み手続きをする
・保険証券
・車検証
・運転免許証
手続きの流れや必要書類は、ほとんど個人契約の場合と変わりません。
ただし、運転免許証は車を運転する全従業員のものが必要になる場合があります。
個人から法人に名義変更する場合
個人契約をしていた自動車保険を、法人契約に名義変更したいと考える方も少なくないでしょう。
事故を起こさず保険を利用していなかった場合は、等級が引き継がれ割引率が高くなる場合があるからです。
フリート契約の場合は、等級がないため個人契約を引き継ぐ必要はありませんが、ノンフリート契約は条件によっては名義変更が可能な場合があります。
・新しく設立された法人
・個人事業主として同じ事業を行っていた
・法人設立よりも前に自動車保険に加入していた
このような条件があります。
内容にともない、登記簿謄本などが必要になる場合もあります。
まずは、保険会社に個人から法人に名義変更ができるかを確認して、必要書類や手続きを相談しましょう。
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社用車を安全に利用するためには?
社用車を安全に利用するために、企業がすべきことを紹介します。
定期的な安全運転教育
企業は、従業員に対して定期的な安全運転教育を実施することが重要です。
新しい交通ルールや運転技術、危険予測のトレーニングを行うことで、従業員の運転スキルを向上させ、事故を防ぐことができます。
車両の定期点検と整備
社用車は、日常的に使用されるため、定期的な点検と整備が欠かせません。
法定点検の他にも、車両の走行距離や使用状況に応じた自主的な点検を行い、故障や不具合があれば早期に対処することが大切です。
これにより、事故や故障による業務の遅延を防ぐことができます。
運転者の健康管理
運転者の健康状態が悪化していると、事故のリスクが高まります。
特に長距離運転や疲労による集中力の低下が問題です。
定期的に健康診断を行い、適切な休憩時間を確保することで、運転者の体調管理を徹底しましょう。
事故後の対応体制の整備
万が一事故が発生した場合に備えて、事故発生時の対応マニュアルを作成し、従業員が迅速に対応できるようにしておくことも重要です。
また、事故後の報告や保険手続き、修理手配の流れも明確にしておくことで、業務への影響を最小限に抑えることができます。
まとめ
法人契約は、特約や契約方法などが個人契約よりも複雑なため、保険会社に相談して契約することをおすすめします。
万が一の時に、補償内容が不足していた場合、会社の経営に関わる事態になるほど、自動車事故の損害は大きいです。
ご自身が納得いく必要な自動車保険に加入するためにも、保険会社や代理店の担当者からきちんと説明を受けましょう。
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