受託者賠償責任保険は、顧客や取引先から預かった物(受託物)への損害事故に対して備える保険です。
店舗経営や倉庫業、展示物会場の運営など、第三者から受託された品を扱う業者は多々ありますよね。
しかし、受託者賠償責任保険は全ての事業者が加入できるわけではありません。
ここでは、受託者賠償責任保険について、加入対象事業者、補償対象になる事故例、受け取れる保険金の種類について分かりやすく解説していきます。
受託者賠償責任保険とは
受託者賠償責任保険とは、第三者から預かった所持品・荷物を、元の状態のまま返すことができなくなってしまった場合の賠償金を補償する保険です。
どれだけ注意を払っていても、破損や火災、盗難被害に遭う可能性はゼロとはいえませんよね。
そのため、美容サロンや倉庫業など、第三者から荷物を預かる機会がある業種の方は知っておくべき保険です。
受託者賠償責任保険は加入できる事業者が限られている
受託者賠償責任保険は、加入できる業種が限定されています。
- 美容室、サロン店、レストラン、ゴルフ場など、お客様の荷物を預かる店舗・施設を運営している事業者
- ロッカー運営など手荷物を預かる事業者
- 倉庫業者
- 一般企業で第三者の荷物を預かり保管・管理する業者
基本的に、荷物預かり所、委託加工業者、倉庫業者の受託物(預かり荷物)が保険の対象になります。
ただし、第三者から荷物を預かる事業者だからといって、すべての方が受託者賠償責任保険に加入できるわけではありません。
受託者賠償責任保険の対象外になっている事業者
以下の業者は受託者賠償責任保険の対象外です。
- 自動車整備工場、駐車場経営など自動車の受託・管理をしている業者
→自動車管理者賠償責任保険 - 運輸業者の受託貨物
→貨物保険 - 旅館やホテル
→旅館賠償責任保険 - クリーニング業者
→クリーニング業者賠償責任保険 - 清掃業者
→請負業者賠償責任保険
それぞれの業種に合った保険が用意されているので、そちらの保険への加入を検討しましょう。
受託者賠償責任保険の対象になる事故例
続いて、受託者賠償責任保険の対象になる代表例をご紹介していきます。
・倉庫に保管していた顧客の荷物(商品)が、火災により焼失してしまった
・修理のために預かっていた機器を落として損壊してしまった
・預かっていた手荷物が盗難されてしまった
など。
預かり保管中に起きてしまった不慮の事故(損壊・紛失・盗難)が、補償の対象です。
ただし、保険会社によって補償範囲が異なるため、加入する前によく確認しておいてください。
受託者賠償責任保険で補償されない事故例
一方、受託者賠償責任保険が適用されない事例もあります。
・故意により発生した損害
・身内に対する損害
・宝飾品など高価な預かり物の損害
・預かり時点で損害の兆候・性質があった
保険金目当てや、嫌がらせ目的で起こした損害に対しては、当然のことながら保険金はおりません。
故意に起こした事故であれば、契約解除や訴訟問題に発展しかねません。
また、受託者賠償責任保険は他人の受託物に対して補償される保険なので、同居家族や身内の物に対する損害は補償対象外です。
宝石や貴金属類の事故に関しては、高額過ぎる損害が発生した場合は補償されない可能性があります。
受託者賠償責任保険で受け取れる保険金の種類
- 損害賠償金
- 損害防止軽減費用保険金
- 権利保全費用保険金
- 緊急措置費用保険金
- 争訟費用保険金
- 協力費用保険金
各保険金の具体的な概要を解説していきます。
損害賠償金
被害者に対して支払った損害賠償金が補償されます。
具体的には、修理費、汚損・損壊などによって生じた損害費用、同じ品を調達(弁償)するために発生した費用などが該当します。
ただし、被害者に対して支払った見舞金などは損害賠償金に該当しないため、保険金はおりません。
損害防止軽減費用保険金
事故が発生し、被害拡大を防止するために発生した費用に対しても保険が適用されます。
例えば、顧客からの受託物を保管している倉庫で火災が発生したとします。
この場合は、消火器や人員の動員、機器の使用など、消火活動(損害防止軽減策)にかかった費用などが対象になります。
権利保全費用保険金
権利保全費用保険金は、受託物の損害が第三者要因だった場合におりる保険です。
例)
・美容室で預かっていたお客様のカバンが、外から入ってきた泥棒によって盗まれてしまった
→泥棒(加害者)に対して、美容室側は損害賠償を請求を行った
→弁護士費用、内容証明郵便、請求書の郵送費などが発生した
上記のようなケースに発生した費用が補償対象です。
緊急措置費用保険金
事故が発生し、被害拡大を防止するために費用がかかったものの、実は損害賠償責任がなかった場合に受け取れる保険金です。
応急手当て・護送・治療・看護などの緊急措置にかかった費用が補償対象になります。
争訟費用保険金
被害者から損害賠償請求の訴えを起こされた場合に発生する、裁判費用・弁護士費用などが補償対象になります。
裁判上の和解や調停等の費用も対象になります。
協力費用保険金
加入している保険会社が、損害賠償請求の解決にあたる場合、協力するために加入者側が直接支出した費用が、「協力費用保険金」として戻ってきます。
ここまでご紹介してきた内容が、受託者賠償責任保険でおりる一般的な保険金の種類です。
次の項目では、さらに幅広い範囲をカバーできる特約補償について解説します。
受託者賠償責任保険に付帯できる特約
「漏水事故に対する補償」「受託物の修理及び加工中に発生した損害事故」「貴金属類の事故」などは、基本的に受託者賠償責任保険の補償対象外です。
しかし、特約を付帯することで補償対象の範囲を広げることが出来ます。
尚、「特約=オマケ」と思われがちですが、発生リスクのある事故に対して特約を付けていないと、いざという時役に立ちません。
特約をつけるとその分保険料が高くなるので、自社に合ったオプションを見極めて付帯しておきましょう。
受託者賠償責任保険の保険料
受託者賠償責任保険の保険料は、主に以下の条件に基づいて算出されます。
- 受託物の種類
- 受託物を保管および管理する場所
- 受託する目的、管理方法
- 保険金の支払い限度額
- 免責金額(自己負担する金額)
- 付帯する特約
受託者賠償責任保険の場合、第三者から預かる物(受託物)の種類や管理する場所など、様々な条件によって保険料が算出されます。
保険料をできるだけ安く抑えたいのであれば、自社が負担する「免責金額」を多めに設定するとよいでしょう。(※但し、保険会社によっては免責金額が固定で決められている場合もあります)
受託物に対してどのようなリスクが考えられるのか、ある程度把握した後は、自社に必要な特約を付けた場合の相見積もりをとってみることをおすすめします。
受託者賠償責任保険を扱っているおすすめの保険会社
保険会社名 | 商品名 |
損保ジャパン | 受託者賠償責任保険 |
三井住友海上 | 受託者賠償責任保険 |
東京海上日動 | 受託者賠償責任保険 |
大同火災 | 受託者賠償責任保険 |
商品名は同じですが、基本補償(補償範囲)・付帯できる特約補償・保険料は保険会社によって異なります。
自社に必要な補償を把握して、比較検討していきましょう。
【まとめ】対象事業者は加入しておいた方が良い
受託者賠償責任保険は、第三者からの預かり品(受託物)への損害を補償する保険です。
どれだけ慎重に管理していても、もし事故が発生した場合には大きな損害となってしまうリスクがあります。
そして、信頼して預けていただいた品に損害を与えてしまうことは、会社の評価(信用)を下げることにもつながりかねません。
十分な補償と迅速な対応ができるよう、対象事業者は受託者賠償責任保険へ加入しておいた方が得策といえるでしょう。
ただ、「自社に合った補償(特約)が分からない」「どの保険会社に加入するか迷ってしまう」という経営者の方は少なくありません。
保険Times(株式会社インシュアランスブレーン)では、受託者賠償責任保険を含め、賠償責任保険に関する多数のご相談・お問い合わせをいただいております。
保険に関するお悩みや見積もりが知りたい方も、ぜひお気軽にご相談ください。
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