従業員の福利厚生のために法人保険を活用したい。
法人が従業員のために保険に加入するメリットやデメリットを知りたい。
法人が加入する生命保険の種類はたくさんあり、自社にベストなプランがよく分からないという方も少なくないでしょう。
今回は、法人保険を活用した従業員の福利厚生プランについて解説します。
この記事を読んだあなたは、法人が福利厚生プランに加入することによって経営者や従業員のメリット・デメリットについて理解できるでしょう。
法人保険の種類
法人保険は、企業が加入する保険です。
主に、経営者・役員向けの保険と従業員向けの保険の2種類に分けられます。
経営者・役員向けの法人保険
経営者・役員向けの法人保険は、下記の通りです。
・終身保険
・逓減定期保険
・役員保険
・退職金準備保険
・事業保障保険
終身保険
経営者が死亡した場合に、事業継承や相続に関わる資金を確保するために加入する保険です。
保障期間が一生続き、退職後も適用されます。
逓減定期保険
経営者や役員が亡くなった場合、会社に大きな損害を与えることを考慮し、万が一の場合に備えて加入する保険です。
死亡保険金が時間と共に減少していくため、経営者が高齢化するに従ってリスクが低下する場合に適しています。
役員保険
企業の役員を対象にした保険で、死亡保障や病気に対する保険です。
会社の重要な役職者が対象となり、役員の退職金準備にも活用されることがあります。
退職金準備保険
経営者の退職時に支給する退職金を準備するための保険です。
退職時にまとまった資金を確保することができ、税制上のメリットもあります。
事業保障保険
経営者が死亡または重病になった場合に、事業運営資金を確保するための保険です。
事業を継続するための資金や、後継者への負担軽減に役立ちます。
従業員向けの法人保険
従業員向けの法人保険は、下記の通りです。
・団体定期保険
・団体医療保険
・従業員退職金準備保険
団体定期保険
従業員が一括で加入することができる生命保険で、個人で加入するよりも保険料が安く、従業員の福利厚生として加入する保険です。
死亡保障や災害時の補償が含まれます。
団体医療保険
企業が従業員に提供する医療保険で、病気やケガに備える保険です。
入院費や治療費の補助が行われ、従業員が安心して治療を受けられるように支援します。
従業員退職金準備保険
従業員が退職する際に、退職金の支払いをスムーズに行うための保険です。
退職時に企業が多額の資金を準備する必要がある場合に利用されます。
従業員に対する福利厚生プラン
法人向けの福利厚生プランとして、養老保険や定期保険を利用する場合が多いです。
養老保険
養老保険は、貯蓄機能と保障機能の両方を持つ保険です。
契約期間中に万が一のことがあった場合、死亡保険金が支払われますが、契約期間満了時に被保険者が生存していれば、満期保険金が支給されます。
役員や社員の退職金の積み立てとして、養老保険の満期金を退職金の一部として支給します。
定期保険
定期保険は、一定の期間内に限って保障を提供するシンプルな保険です。
満期保険金などは支払われず、掛け捨ての保険になります。
役員や従業員が死亡した際に、弔慰金として遺族に支払われます。
法人が福利厚生として保険に加入するメリット
法人が福利厚生として、保険に加入するメリットを紹介します。
優秀な人材が集まる
会社として福利厚生がしっかりしていると、人材が集まりやすいと言えるでしょう。
就職活動や転職活動をする中で、ほとんどの求職者が確認するのが福利厚生です。
そのため、退職金制度や弔慰金制度がしっかり整った会社に人材が集まります。
人材が多く集まると、その中から優秀な方を厳選採用できるため、良い人材を確保できることに繋がるでしょう。
従業員の満足度向上
福利厚生が整っていると、優秀な人材が集まった後も、会社への満足度も高くなります。
従業員が安心して働ける環境を作ることも会社に求められることのひとつです。
税制のメリットがある
法人が保険に加入することで、保険料の一部または全部を経費として計上できる場合があります。
税務上、法人の税負担を軽減することができます。
しかし、税法の変更に伴い、損金算入の扱いが変更になる可能性があるため、注意が必要です。
法人が福利厚生として保険に加入するデメリット
逆に、法人が福利厚生として、保険に加入するデメリットを紹介します。
保険料の負担が大きい
メリットも多い法人保険ですが、保険料の支払いが負担になることがデメリットです。
プランによっては保険料が高額になる場合や、解約返戻金に対し保険料が高い場合が考えられます。
そのため、会社の業績などを考慮して保険に加入しないと経営が圧迫される恐れがあるため、注意が必要です。
税務が複雑
法人保険に関する税務処理は、複雑なため税理士などに相談することをおすすめします。
損金として計上できる部分が限られていることもあり、誤った処理を行うと税務上の問題が発生することも考えられるでしょう。
また、解約時の返戻金は利益とされ、法人税が課されることもあります。
事前にしっかりと計画をすることが大切です。
解約時のリスク
解約時には、下記のようなリスクが考えられます。
・返戻率の低下
・資金繰りの影響
・タイミングの重要性
解約の時期によっては返戻率が低く、支払った保険料のほとんどが戻ってこない場合があります。
解約して返ってきた返戻金は、利益として計上されるため、法人税の負担が大きくなる可能性もあるでしょう。
そのため、利益が多い時期に解約を行うと、税負担が増加することもあります。
解約することで収益に与える影響を慎重に検討することをおすすめします。
従業員福利厚生プランの経理処理
養老保険と定期保険の経理処理について紹介します。
養老保険
養老保険は、保険料の1/2を損金算入することが可能1です。
保険料の1/2は従業員が死亡した場合の死亡保険金の積立として損金算入でき、残りの1/2は従業員が定年を迎えた場合の満期保険金なので資産に計上されます。
そのため、法人では養老保険の福利構成プランを「ハーフタックスプラン」と呼んでいます。
保険料
契約者:法人
死亡保険金受取人:従業員の遺族
満期保険金受取人:法人
年間保険料:600,000円
借方 | 貸方 |
---|---|
保険料積立金:300,000円 福利厚生費:300,000円 | 現金・預金:600,000円 |
死亡保険金受取時
契約者:法人
死亡保険金受取人:従業員の遺族
満期保険金受取人:法人
死亡保険金:10,000,000円
保険料積立金:2,500,000円
借方 | 貸方 |
---|---|
雑損金:2,500,000円 | 保険料積立金:2,500,000円 |
従業員が死亡した場合の受取人は、従業員の遺族となるため、死亡保険金は遺族に支払われるので、「損金扱い」になります。
満期保険金受取時
満期保険金:10,000,000円
保険料積立金:5,000,000円
借方 | 貸方 |
---|---|
現金・預金:10,000,000円 | 保険料積立金:5,000,000円 雑収入:5,000,000円 |
法人が満期保険金を受け取った場合は、保険料積立金と満期保険金の差額を雑収入として益金算入します。
解約返戻金受取時
解約返戻金:4,500,000円
保険料積立金:2,500,000円
借方 | 貸方 |
---|---|
現金・預金:4,500,000円 | 保険料積立金:2,500,000円 雑収入:2,000,000円 |
解約返戻金を受け取った場合は、保険料積立金と解約返戻金の差額を雑収入もしくは雑損失として扱ってください。
定期保険
定期保険は、税務上の取り扱いによって保険料の一部または全部を経費として計上できることがあります。
そのため、法人の税負担を軽減することが可能です。
保険料
定期保険の保険料の経理処理は、最高解約返戻率に応じて4つに区分されます。
最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 取り崩し期間 |
---|---|---|---|
50%以下 | なし | なし | なし |
50%超70%以下 | 保険期間の当初4割相当の期間を経過する日まで | 当期支払保険料の40% | 保険期間の7.5割相当の期間経過後から保険期間の終了の日まで |
70%超85%以下 | 保険期間の当初4割相当の期間を経過する日まで | 当期支払保険料60% | 保険期間の7.5割相当の期間経過後から保険期間の終了の日まで |
85%超 | 次のうちいずれか長い期間まで ・保険期間開始日から最高解約返戻率となる期間の終了の日まで ・Aの期間経過後において「(当年の解約返戻金相当額-前年の解約返戻金相当額)÷年換算保険料相当額」が70%を超える期間 | ・保険期間の当初10年経過する日まで(当期支払保険料×最高解約返戻率の90%) ・保険期間の11年目以降残りの資産計上期間(当期支払保険料×最高解約返戻率の70%) | 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後から保険期間の終了の日まで |
死亡保険金受取時
死亡保険金:100,000,000円
前払保険料累計:40,000,000円
借方 | 貸方 |
---|---|
現金・預金:100,000,000円 | 前払保険料:40,000,000円 雑収入:60,000,000円 |
死亡保険金を受け取った場合、前払保険料を取り崩して、死亡保険金との差額は雑収入として、益金算入します。
解約返戻金受取時
解約返戻金:4,000,000円
前払保険料累計:2,000,000円
借方 | 貸方 |
---|---|
現金・預金:4,000,000円 雑損失:16,000,000円 | 前払保険料:20,000,000円 |
解約返戻金を受け取った場合は、前払保険料を取り崩し、前払保険料よりも解約返戻金の方が少ない場合は、差額を雑損失として損金算入します。
もし、前払保険料よりも解約返戻金の方が多い場合には、差額を雑収入として益金算入しましょう。
法人保険に加入したら福利厚生規程を作成
法人が従業員のために保険に加入した際には、福利厚生規程を作成することをおすすめします。
福利厚生規程は、企業が従業員に対して提供する福利厚生制度やその利用条件について、明確なルールを定めるためのものです。
福利厚生規程があることで、従業員に対しての保険内容や利用方法が明確化され、不公平感やトラブルの発生を防ぐ効果があります。
福利厚生規程に盛り込むべき主な内容を5つ紹介します。
保険の目的と概要
まず、会社が保険に加入した目的を明記します。
例えば、「従業員の健康・安全・安定した生活を支援するため」や、「将来の不安軽減のため」といった目的を示し、企業としての福利厚生の方針を理解してもらいましょう。
保険の対象者
保険の適用対象となる従業員を定義します。
正社員だけでなく、契約社員やパートタイマーも含める場合は、その詳細を記載しましょう。
対象者の範囲がはっきりすることで、全従業員が保険制度についての理解を深められます。
保険の種類と内容
企業が加入している保険の種類と、その内容について具体的に記述します。
・保険金額
・給付条件
・加入の必要要件
・会社が負担する保険料の割合
保険の詳細を従業員が確認できるようにしましょう。
保険料負担の詳細
法人保険では保険料を会社が全額負担する場合と、従業員が一部負担する場合があります。
負担割合について明示し、従業員が理解しやすい形で説明することが大切です。
従業員負担がある場合には、その方法や支払いタイミングも含めて記載することをおすすめします。
給付条件と手続き
保険金の給付を受ける際の条件や手続きについても、具体的に説明します。
例えば、「病気や事故によって給付金が支払われる場合」「災害によって適用される場合」など、給付の条件や申請の流れ、必要な書類などを記載しましょう。
従業員向け法人保険の注意点
従業員向け法人保険に加入する場合に、注意しておくべきポイントを紹介します。
コストのバランス
法人の福利厚生として保険を利用する場合、会社が負担する保険料、従業員が負担する保険料のバランスを良い具合に設定することが重要です。
コスト負担が大きすぎると、会社の財務に影響を与え、長期的な運用が難しくなることも考えられます。
しっかりと、財務状況を見ながら保険プランを考えましょう。
契約内容の共有
保険の契約をする際、契約内容について従業員に説明し理解してもらうことが大切です。
どのような保険に加入しているか、補償内容や保険金支払いの条件について理解してもらうことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ
今回は、法人保険を活用した従業員の福利厚生プランについて、メリットとデメリット、注意点などを解説しました。
法人保険が福利厚生プランに加入することによって、従業員と会社の両方にとってメリットがあるため、補償重視でプランに加入することをおすすめします。
また、保険の目的や会社の財務状況をしっかり理解した上で契約しましょう。
脚注
本コンテンツは情報の提供を目的としており、保険加入その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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